暮れる

日が暮れる頃に、途方に暮れました。

・・・なんてね。

トホウニクレル。

声に出して言うと、なんだか本当に困っているみたいで、

コトバって面白いなあって思う。

でも、コトバは、ときどき、役立たず。

喋っていないと不安になるときが、あります。

というか、気持ちの疎通の手段として、コトバに頼るしかないから、

一生懸命コトバにするワケです、自分の想いを。

逢っているときは、いい。

表情だとか、声色だとか、ジェスチャーだとか・・・

コトバにだけ頼らなくても、温度がちゃんと伝わるから。

でも、そうじゃないときには、

コトバや文字に、想いを込める。

それが、伝わっている・・・と、信じようとする。

けれども、ふっと思う。

このコトバで合っているかなあ？

わたしのこの気持ちは、こんなコトバなのかなあ？

１ミリも漏らさずに、この気持ちを伝えたいのに、

なんだか足りない気がする。

全然、足りない気がする。

もどかしくなる。

そして、途方に暮れる。

３００円握りしめて、外に出た。

通りに出ると、びっくりするほどまるくなった月が、

　「どうかしたのかい？」

って、わたしを見下ろしていた。

きれいだな・・・と、思った。

うん、このコトバで合ってるな・・・と、思った。

伝えられるコトは、コトバで伝えたらいいんだ。

足りなくてもいいから・・・黙り込んだら、もっと伝わらないもの。

もしも、ちょっと違うって思ったら、そう言えばいいんだ。

言いっぱなしで放っておかなければ、いいんだ。

途方に暮れてるヒマは、ない。

だって、また夜は明けるんだから。

そんなふうにして、暮らしていくんだから。