ばんじさいおーがうまさ!

いろいろあるけどさ、まあなんとかなるっしょ!! なんとかしよーぜ!!

ガラス越しのジーンズ

これは、月曜日の出来事。

わたしは、ガラス越しにマネキンが着ているジーンズを見ていた。

何度もその前を通り過ぎ、辺りをキョロキョロと見回し、

・・・そんなわたしは、絶対に挙動不審だったに違いない。

でも、何度もそれを繰り返していた。

場所は、近所のジャスコ

その話をするためには、日曜日の夜の話から聞いてもらわなくちゃならない。

五年生の娘は、最近、着るモノにうるさい。

わたしが選んで買ってきた服は、

 「あ、うん、着る着る」

と言っても、そのままタンスにしまわれてしまうコトが多くなった。

そのくせ、毎朝のように、

 「着る服がなぁーい」

と、ブツブツ言う。気に入った服ばかりを着まわす。

そんなワケで、日曜日、二人で服売場に行った。

サイズは140センチ。

彼女が欲しいのは、ジーンズ。

たまたま、わたしも娘も「これ、かわいいよね」と、意見が合ったモノがあった。

が、しかーし・・・・サイズがなかった(><)

娘は、かなり落胆していた。

結局、なにも買わずに日曜日は帰り・・・・。

月曜日、もう一度一人でジャスコを訪れたわたしは、

服売場ではなく、玩具売場のディスプレイのマネキンが着ているジーンズを見て、

 「あっ・・・・」

と、足を止めた。

昨日、泣く泣く諦めたジーンズだ。これ・・・・・・140センチかも????

でも、そのディスプレイは、客が入れないガラスの向こう。

店員さんに言えば、見てくれるかなあ。

だけど、ここは玩具売場だよ。

でもでも、欲しいんだから、聞くだけ聞けばいいじゃん。

わたしは、客よ、客。

いろんな葛藤がわたしの中をグルグルしていて、その間、冒頭のように、

ガラスの前をウロウロ、キョロキョロしていたワケだ。

そして、わたしは、意を決してきびすを返し、近くで商品の補充をしていた

女性の店員さんに声をかけた。

 「あのー、すいません」

顔を上げた店員さんは、ニコリと微笑んで、わたしを見た。

 「はい?」

 「あのですね、あそこに飾ってあるジーンズが欲しいんですよ。

っていうか、サイズが知りたいんです。サイズが合えば、欲しいなと・・・・」

 「えっ? ど、どれですか??」

わたしは、戸惑う店員さんを誘い、マネキンのところまで行った。

 「これです」

 「・・・・これですか」

そこに行くためには、玩具売場のディスプレイをどけたりしなくてはならなかった。

かなり、面倒に違いない。

でも。

 「ちょっとお待ち下さいね。サイズは、いくつですか?」

とってもカンジのいい笑顔で、店員さんは、そう言った。

 「140センチです。150でも、いいかも知れないですけど・・・・」

よいしょ!と、ディスプレイをどけて、いろんなモノをまたいで、

店員さんは、マネキンのジーンズを見てくれた。

果たして。

 「140センチです!」

やった!!!

 「脱がせますか?」

 「お願いしますっ」

・・・・かくして、わたしは娘のジーンズをゲットした。

嬉しかったのは、店員さんのくったくない笑顔。

 (えー、なんなのこの客、チョーめんどくさいんですけどぉ)

とか、

 (忙しいのに変なコト頼まないで欲しいわ)

とか、そんな素振りはカケラもなかった。

同じ売場で、ちょっと前に、「かわいいお小遣い帳」を探していたとき、

文具コーナーになかったので、レジ脇のとこにいた店員さんに聞いたら、

ものすごく迷惑そうに、

 「ああ、あるとしたら玩具売場のファンシーショップです。

文具売場にはありませんね」

と、口調こそ丁寧だったけど、「しっしっ」って言われてるみたいな印象で、

そのとき、いろいろ落ち込んでいたわたしは、

 「わかりました、さがしてみます」

って、言って歩き出したら、目の奥がツーンとして、上を向いて歩かなきゃなんなかった。

おんなじ「買い物」なんだけど。

お金を払って、商品を買うんだけど。

でも、違う。こんなにも、違う。

わたしは、買ったジーンズを抱えて、娘の喜ぶ顔を想像した。

すごく嬉しかった。

マネキンから脱がしたジーンズを、いたずらっぽく笑ってわたしに差し出した

素敵な笑顔の店員さんは、わたしにそんな小さくて大きなハッピーを、くれたんだ。

娘は、今日、早速そのジーンズを穿いて学校へ行きました。まる。